食品をアップサイクルする事例は?|利点・欠点もあわせて説明
環境負荷を削減し、循環型社会を目指す「アップサイクル(upcycle)」。SDGsにも大きく貢献するこの考え方を、世界の多くの業界・企業が事業に取り入れています。
今回は、アップサイクルの中でも身近な存在である「食品」の事例について、ピックアップして解説。これに加え、食品をアップサイクルした際の利点と欠点や、食品を混抄紙にアップサイクルするポイントにも触れていきます。
最後まで読めば、アップサイクルに関する知識をさらに得られるでしょう。食品のアップサイクルやサステナビリティに関する新たな施策に注目している方は、ぜひお読みください。
目次
アップサイクルの意味は?
食品のアップサイクルについて解説する前に、この段落では、アップサイクルという言葉の意味と、アップサイクルに似た言葉の違いを説明するのでぜひご覧ください。
不用品の価値を高めて再利用すること
アップサイクルは、「捨てられる不用品の付加価値を高め、別の形で再利用すること」という意味を持つ言葉です。
また、アップサイクルには「創造的再利用」という別名もあります。そのため、不用品を再利用するうえでクリエイティブなプロダクトが作りやすいことが、アップサイクルの大きな特徴です。
なお、アップサイクルは昔から存在してきた考え方だといわれています。日本でも、金継ぎをはじめとした「不用品や壊れてしまったものを再利用する文化」が庶民の間で親しまれてきました。このようにアップサイクルがどのようなものなのか学ぶことで、食品のアップサイクル事例がより理解しやすくなるはずです。

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アップサイクルと似た言葉について
アップサイクルには、以下のように似た言葉がいくつか存在します。下記の一覧をご確認ください。
- リサイクル:不用品を原材料や資源に戻し、別の形で再利用すること
- リデュース:排出されるごみの量を減らすこと
- リユース:同じものを使い続け、廃棄しないこと
- ダウンサイクル:不用品が本来持っていた価値を落とす形で再利用すること
上記の言葉と比較すると、アップサイクルは「不用品の価値を上げること」を重視しています。これにより、クリエイティブなプロダクトが誕生しやすくなっているという仕組みです。
「アップサイクル」と「リサイクル」では、意味は異なりますが、共通点やつながりがあることも大きな特徴です。アップサイクルとリサイクルの違いについては、こちらの「アップサイクルとリサイクルの違いは?|リメイクなど似ている用語も紹介)」で詳しくご紹介していますので、アップサイクルを検討中の方は、ぜひ参考にご覧ください。
食品をアップサイクルして感じられる利点と欠点
さて、ここからは食品をアップサイクルするケースを取り上げていきます。まず説明するのは、食料を循環させることで感じられる利点と欠点についてです。食にまつわるアップサイクルに関心がある方は、ぜひご確認ください。
①利点について
「アップサイクルしたプロダクトを広報活動に利用できること」が大きな利点のひとつです。というのも、地球環境の保護活動を推進している企業だというパブリックイメージがつき、社外から高評価が得られやすいからです。
食品は日常生活の中でも身近なアイテムであるため、クライアントや顧客が事業内容、技術、生産者などを想像しやすいものです。
自社から出た食品廃棄物を製品に生まれ変わらせることで、「自社の不用品を無駄にしない」というメッセージを世間に向けて広められるでしょう。
②欠点について
例えば、食品を紙にアップサイクルする際は、すべての食品廃棄物をそのまま使用することができないという問題があります。山陽製紙で紙を作る場合、最低ロットの600kgのうち廃棄物を混ぜられる割合(混抄率)は約1~5%程度(最大でも約20%まで)です。
そのため、事前に想像していたよりも、廃棄物を効率よく再利用することができないケースもあると覚えておきましょう。
食品をアップサイクルする事例4選
続いて、この段落では食品をアップサイクルする事例を4つまとめました。どのような事例が最適なのか、自社のケースと当てはめながら見ていきましょう。
①食品→食品の事例
傷があるものや、製造過程で不用となる部分などを新しい食品に開発する方法があります。たとえば、「廃棄予定の野菜かす・不揃いの野菜をおやつ(チップスやグラノーラ)に加工する」「商品としては販売できない規格外の果物を飲料(クラフトビールやジュース)にアップサイクルする」などが具体的な例に挙げられるでしょう。
アメリカでは「アップサイクルフード協会(Upcycled Food Association・UFA)」が設立されており、社会全体で食品から食品へのアップサイクルを求める動きが活発になっています。こうしたムーブメントは海外だけでなく、今後日本でも広がっていくことでしょう。
②食品→雑貨の事例
食品を素材として使用し、さまざまな雑貨として活用するプロジェクトも多数発表されています。主な例は、以下のとおりです。
- フルーツの皮を合成皮革に加工し、おしゃれなファッション小物を作る
- 廃棄予定の食材を化粧品にアップサイクルする
- 規格外野菜を絵具やクレヨンなどの画材にする
企画の内容によって幅広い商品・ブランドを生み出すことが可能なので、これらはクリエイティブ要素が特に高い事例だといえるでしょう。アーティスティックな要素もアピールしやすいため、企業のブランディングにも役立つはずです。
③お茶の副産物→紙の事例
弊社・山陽製紙株式会社では、出涸らし茶葉をはじめとしたお茶の副産物を混抄紙(異なる素材のものを混ぜこんだ紙のこと)にアップサイクルしています。
たとえば一般社団法人しずおかビジョン研究所様では、「茶抄紙」としてお茶の再生紙を製造されました。
この再生紙は名刺や紙ファイルとして使用され、「お茶のまち」をアピールすることに貢献。食品のアップサイクルは、こういった特産品のPRにも有効に使われています。
参考ページ:一般社団法人しずおかビジョン研究所様 お茶再生紙[茶抄紙](混抄紙)
また、株式会社七葉(nana’s green tea)様では、商品の製造にあたって発生してしまう出涸らし茶葉をノートやしおりにアップサイクルされました。茶葉が紙に混ぜ込まれていることがわかりやすいのがポイントです。
これらのグッズは福袋のアイテムとなり、企業の指針を消費者に伝える役目を果たしました。
参考ページ:株式会社七葉(nana’s green tea)様 出涸らし茶葉再生紙(混抄紙)
④ういろの端→紙の事例
山陽製紙には、ういろの端を混抄紙にアップサイクルした事例もございます。この事例では、株式会社大須ういろ様とともに「ういろを混抄率20%で混ぜ合わせた再生紙」を作成。食品ロスをできる限り減らすために、本来よりも高い混抄率を実現させました。
参考ページ:株式会社大須ういろ様 ういろ混抄紙
混抄紙についてより詳細な情報が知りたい方は、山陽製紙が現在までに取り組んできた「オーダーメイド再生紙」の例も紹介しているので、以下の記事をぜひご覧ください。
関連記事:紙に食べ物を混ぜられる?!混抄紙とは
参考ページ:オーダーメイド再生紙
食品を紙にアップサイクルするポイントは?
食品を混抄紙にアップサイクルするアイデアにはさまざまなものがあります。それでは、食品→混抄紙のアップサイクルを進めるにあたって、どのようなポイントに気をつければ良いのでしょうか。この段落では、代表的な2つのポイントを紹介します。
①混ぜられるものと混ぜられないものがあると理解する
食品を混抄紙にアップサイクルする場合は、「どんな食品でも混抄紙にアップサイクルできるわけではない」と理解することが重要です。
たとえば、油分の多い食品や粘度が高い食品は、紙に混ぜることが難しいといわれています。そのため、まずは業者に相談し、今後の方向性について話し合うことが大切です。
②原料の保管・提供方法をよく検討する
食品を紙に抄きこむにあたって、原料の保管方法や提供の手段についても業者とよく話し合っておきましょう。なぜなら、食品の保管状況が悪いと、カビの発生や腐敗のリスクがあるからです。綿密なスケジュールを立て、安全な状態で食品をアップサイクルすることができるように対策しておくことが必要です。
食品を紙にアップサイクルする場合は、紙そのもののアップサイクルや再生紙の知識を得ると良いでしょう。そうすることで、認識ミスによる準備過程のアクシデントを減らすことができるはずです。
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執筆者:MU