再生紙のメリット・デメリット~再生紙の良さを活かした紙づくり
地球環境の保護という観点から、再生紙を利用することを推奨されてはいるものの、再生紙はごわついたり文字が書きにくかったりとデメリットが多いのでは…と感じている方もいるかもしれません。
確かに品質の面ではデメリットだと捉えられている部分もありますが、逆にそのデメリットを再生紙の味として活かした紙製品も多く存在します。
そこで、再生紙にはどのようなメリット・デメリットがあるのか、そして再生紙の良さを活かした製品にはどのようなものがあるのかなど、再生紙のスペシャリスト集団である私たち山陽製紙がご紹介します。
目次
関連記事:「再生紙とは?平安時代から続く紙のリサイクル文化」
再生紙にはメリットもデメリットも
再生紙とは、一度使用された新聞やクラフト紙などの古紙を再利用して作られる紙のことです。
再生紙は紙ゴミとして捨てられるはずだった資源を有効活用したものであるため、一般的には、地球環境にも優しいものという良いイメージがあるかと思います。
しかし反対に、古紙の種類によっては品質にバラつきが出てしまったり、非再生紙よりも耐久性が低いイメージがあったりと、品質面でデメリットだと感じてしまう部分もあります。
そこで、再生紙のメリット・デメリットにはどのような点があるのか、それぞれまとめていきます。
再生紙のメリット
再生紙を使用するメリットには、どのようなものがあるかご存じでしょうか?
メリットを挙げると、大きく以下の2点となります。
- 資源が有効活用できる
- 森林伐採量が削減できる
では、この2つについて詳しく解説します。
資源が有効活用できる
再生紙のメリットの一つとして挙げられるのが、資源の有効活用です。
紙を製造する際には、パルプの原料として木材を消費することになりますが、ゴミの中でも多くの割合を占める紙ゴミをリサイクルし、紙の原料として再利用することで、限りある資源を有効活用することができます。
さらには、ゴミを資源としてリサイクルすることによって、ゴミの廃棄量を減量することもできるため、地球環境にとっても、再生紙の活用はメリットが多いと考えられます。
森林伐採量が削減できる
紙を製造する際の材料であるパルプの原料となる新しい木材の代わりに、一度使用した古紙を原料として再利用することによって、森林伐採量を削減することが可能になるため、地球環境を考える上で、大きなメリットとなります。
特に、紙のリサイクルへの意識が高く、古紙回収率や利用率が高い日本では、国内の森林伐採量の削減だけでなく、パルプ材の輸入元の森林伐採量の削減にも貢献していると言えるでしょう。
再生紙のデメリット
再生紙は単純に普通紙と比較すると、品質の点で劣る印象があります。
それは、かつてコストダウンを一番の目的としてリサイクルが行われていたこともあり、再生紙は弱く、元の紙より劣るというイメージが付いてしまったことも理由の一つです。
では、再生紙の品質面には、実際にどのようなデメリットがあるのか、そして現在では、それにどう対処しているのかをまとめます。
耐久性が低い
再生紙は非再生紙より耐久性が低いという部分がデメリットとして捉えられることがあります。それは、一度又は一度以上使用された紙である古紙をリサイクルし、再度紙に加工しているためです。
実際、紙のリサイクルを繰り返すと、繊維長が短くなっていきます。しかし、これは紙力剤(紙の強度向上剤)等を入れることによって解消できます。
また、耐久性という点で、再生紙は、黄ばみなどが発生しやすいイメージもありますが、これは木材がそもそも持っているリグニンという木質素の高分子物質が関与しているので、古紙に限らず発生します。洗浄を繰り返せば、変色等の劣化を抑えることができますが、逆をいうと、変色しづらいものはそれだけ環境に負荷をかけていることにもなります。
紙粉が出やすい
再生紙は繊維が細かいため、紙粉が出やすいというデメリットがあります。
実は紙をリサイクルする際、古紙を分解し、ゴミやチリ、インクや塗料などの汚れを落とすことで繊維が細かくなってしまい紙粉が出てしまうのです。
大量の紙紛はコピー機の紙詰まりの原因になるため、注意が必要ですが、プレス等の処理により、紙粉を減らす方法もあります。
品質が安定しにくい
再生紙は品質が安定しにくいというデメリットもあります。その理由は、再生紙の原料となる古紙の品質にバラつきがあるためです。
また、古紙はゴミやチリ、インクや塗料の汚れ具合に差があるため、同じ種類の再生紙を利用していても、品質に若干のバラつきや色むらが出てしまいます。
脱墨(だつぼく)処理という漂白を行うことで、色むらを抑えることができますが、山陽製紙では環境への配慮の面からこの処理を行っていないため、結果として、印刷に向かないものや、少しごわつくような肌触りになることがあります。
裏と表で差が出る
円網マシンで作られた再生紙の場合、裏と表の仕上がりに差が出てしまうため、紙の裏に文字などを書くと引っかかりを感じたり、印刷の際に綺麗に印刷できなかったりすることがあります。
他の抄紙機や設備によっては、表裏差が発生しない作り方をすることはできます。山陽製紙の場合、抄紙機は2台とも円網マシンなので、でき上がる紙の裏にはざらつきがあります。
斑点が出る
再生紙を利用する際に、斑点のようなものが混ざっているのに気が付くことがあると思いますが、実は古紙をリサイクルする際に印刷インクが斑点となって紙の表面に出てきてしまいます。
古紙の種類や質などによっても斑点の色や出方は異なるのですが、その質感が味だと感じる人もいれば、綺麗に印刷できない、書いた文字が見えにくいなど、デメリットだと感じる人もいるでしょう。
再生紙を製造する際に漂白をすると斑点は解消できますが、前述の通り、当社では漂白は行わず、牛乳パックから取り出した古紙パルプを適宜混ぜることによって、白さと強度を増すなどの工夫を施しています。それにより、再生紙の品質をより利用しやすいものに変え、同時に環境負荷低減にも貢献しています。
再生紙の良さを活かした製品
これまでの内容を踏まえた上で、再生紙の良さを活かした山陽製紙のおすすめ製品を3つご紹介します。
リサイクル製品とは元の紙より価値は下がる、品質は劣ると考えられることもありますが、山陽製紙では、単なるリサイクルではなく、さらに価値ある商品へと生まれ変わらせる「アップサイクル」にも力を入れています。
「PELP!」
「PELP!」とは、不用になったコピー用紙を再生し、会員同士がシェアして使用するサービスです。
- まずPELP! BAG(古紙回収袋)を購入することで、PELP!の会員になる
- オフィスで不用になったコピー用紙を山陽製紙に送付
- 集まったコピー用紙を再生し、ステキなステーショナリーグッズにアップサイクル
自社で不用になったコピー用紙がアップサイクルされ、オリジナルのオフィス用品やライフスタイル雑貨に生まれ変わることで、お客様からお喜びの声をいただいております。
「crep」
当社のアップサイクルブランド「crep(クレプ)」では、特有のしわから生まれる強度と伸縮性、そして耐水性を兼ね備えた工業用クレープ紙「crep paper」の特徴を活かし、紙製レジャーシート「ピクニックラグ」等のライトアウトドアアイテムを展開しています。
工業用クレープ紙は普段、セメント袋の口縫いテープや電線類の包装などに使用されています。
紙なので軽く、コンパクトに持ち運びができ、丈夫で水にも強く、繰り返し使用できます。自然になじむ優しい風合いの紙とおしゃれなデザインが、自然の中でのアクティビティを彩ります。
SUMIDECO
「Sumideco Paper」は、「廃棄物」として処理に困っていた、和歌山県・みなべ町の特産品でもある南高梅の種を炭化して再生紙に抄きこんだ「炭の機能」を持った紙です。
「炭=sumiでエコ=eco する」をテーマに、食品加工の際に生まれる南高梅の種を炭化し、パウダー化して紙に抄き込んで作っています。
「Sumideco Paper」は、炭が持つ優れた機能を紙に持たせるだけでなく、紙の特性を活かしてさまざまな形状に加工することが可能であるため、産業用梱包資材や企業向けのノベルティなどにも使用されています。
紙創りを通して喜びを共有する山陽製紙
山陽製紙は創業以来、紙と共に歩んできた再生紙のスペシャリスト集団です。 環境のみならず、様々な社会的な課題に真摯に向き合い、自社の特徴を活かしながら解決のために挑戦する企業のお役に立ちたいと考えています。- 小ロットでも発注できる製紙メーカーを探している
- 製紙・商品開発の相談がしたい
- 工場見学をしてみたい
執筆者:山陽製紙
1957年の設立以来、60年余り大阪・泉南市で再生紙に携わってきた紙づくりのプロフェッショナル集団です。 工業用クレープ紙の製造のほか、廃棄されてしまう製造副産物やオフィス古紙などを紙に抄き込みアップサイクルした「オーダーメイド再生紙」や、オフィス古紙の回収や再資源化サービスの「PELP!」など、限りある資源を活用し、循環型社会を実現するため日々取り組んでいます。 小さな製紙メーカーだからこそできる600kgからの小ロットの製紙で、お客様の想いに寄り添った紙づくりを実現していきます。