カーボンオフセットとカーボンニュートラルの違いは?考え方と仕組みを理解しよう
近年、地球温暖化問題が国際的な課題として捉えられ、世界中の企業や個人の中で、「カーボンオフセット」や「カーボンニュートラル」といった考え方や取り組みが重要視されるようになってきました。
地球温暖化の主な原因の一つが温室効果ガスの排出によるもので、その温室効果ガスの7割以上が大気中に放出される二酸化炭素であり、温暖化を引き起こす主たる要因となっています。
今回は、地球温暖化の要因である二酸化炭素排出量を減らすための取り組みである「カーボンオフセット」や「カーボンニュートラル」について詳しく解説し、企業における具体的な二酸化炭素排出量を削減するための施策についてご紹介します。
目次
カーボンオフセットとカーボンニュートラルの違い
環境省では、カーボンニュートラルについて、“温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させることを意味する”と述べています。
つまり「生活や経済活動などによる温室効果ガス(CO2など)の排出量」を「植林や森林管理などによる吸収量」で相殺し、±0に近づけることを狙いとしています。
このカーボンニュートラルは、世界全体で取り組むべき目標であり、特に経済活動が大きい企業においては、CO2排出量を削減することが重要な課題だといえます。
出典:環境省 カーボン・オフセットガイドラインVer.1.1
次に、カーボンオフセットとは、「経済活動におけるCO2の排出削減への取り組み」や「CO2の吸収に関する活動への取り組み」や「CO2の吸収に伴う設備機器などへの投資」を行うことなどを意味します。
両者の違いは、カーボンニュートラルがCO2排出量と吸収量を±0にするという考え方に対して、カーボンオフセットはCO2排出削減や吸収量の増加につながる活動に投資する考え方となります。
このカーボンニュートラルやカーボンオフセットが達成された社会を「脱炭素社会」と称し、全世界での目標とされています。
カーボンオフセットの仕組み
カーボンオフセットとは、人間の経済活動などで排出される温室効果ガスをできるだけ削減するようにして、それでも排出される温室効果ガスについては、排出量に見合った温室効果ガスの削減活動に投資するなどして、排出分を埋め合わせるという考え方です。
環境省では、カーボンオフセットを以下の流れで実施することを推奨しています。
①知って<CO2排出量を選定する>
②減らして<CO2の削減努力を行う>
③オフセット<削減しきれないCO2を温室効果ガス削減・吸収の取り組みに資金を提供する(クレジットを提供する)ことで、オフセット(埋め合わせ)する>
出典:環境省 カーボン・オフセットガイドラインVer.2.0
クレジットとは、「適切な森林管理などによるCO2の吸収量」や「再生可能エネルギーの利用」「省エネ設備の導入」などによる物理的なCO2排出削減量を意味します。
このカーボンオフセットの中で、前記のクレジットを企業が売買する仕組みをJ-クレジット制度と称しています。
クレジットを購入する業者は環境志向型の企業として、他社との差別化、企業価値を向上することができるといわれています。
出典:J-クレジット制度
カーボンオフセットの課題とは
カーボンオフセットによって削減・吸収されるCO2の量は目に見えるものではないため、クレジット提供時(購入時)には、以下の事項に基づいて商品やサービスのCO2削減量や吸収量を明確に示す必要があります。
①前提としてのCO2排出量の適切な算定(データや実験実績などに基づいた一定の精度)
②カーボンオフセットが自らCO2排出削減を行わないことの正当化に利用しないこと
③CO2の削減量、吸収量の適切な算定(データや実験実績などに基づいた一定の精度)
④クレジットの二重登録や同一クレジットの複数のカーボンオフセットへの適用を回避する
⑤カーボンオフセットへの取り組みの適切な情報提供(期間、効果、コストなど)
⑥オフセットプロバイダーの活動の透明性の確保
(オフセットプロバイダー:カーボンオフセットの取り組みを支援、コーディネートする事業者など)
カーボンオフセットは、正確なCO2の排出量・削減量・吸収量を知り、クレジットを売買する企業間で情報を共有し、事業の透明度を高めることが大切だとされています。
カーボンニュートラルとは
カーボンニュートラルとは、前述したカーボンオフセットの取り組みを更に進化させ、市民や企業などの社会の構成員すべてが排出するCO2全てを、人間による創エネや省エネ、自然エネルギーの積極活用により社会全体で±0にしようとする考え方です。
このようなカーボンニュートラルが達成された社会を「脱炭素社会(Carbon neutral society)」と称します。
「2050年カーボンニュートラル宣言」に向けてできること
2020年10月に政府は、2050年までに温室効果ガスの排出量を全体としてゼロにするカーボンニュートラルを目指すと宣言しました。
これは前述の通りですが、CO2をはじめとする人為的な温室効果ガスの排出量から植林・森林管理などによる吸収量を引いて、合計を実質±0にするというものです。
この実現に向けて、120以上の世界中の国と地域が「2050年カーボンニュートラル」という目標を掲げています。
現在、国や自治体としては、再生エネルギーの利活用を推進し、設備機器やシステムの導入を積極的にサポートしています。脱炭素地域づくりを推進するため、地域脱炭素移行・再エネ推進交付金などの支援を行っています。
企業としては、脱炭素経営の推進を図るため、環境配慮や製品製造に関する環境負荷の見える化が求められています。
商品やサービスのライフサイクル(材料調達、製造、使用、廃棄、再利用)において、環境負荷を定量的に把握するLCA手法を採用し、社会に向けて情報を透明化していくことが大切だと言えます。
※LCA(ライフサイクルアセスメント):商品やサービスのライフサイクル(一生)において、環境への影響を科学的にかつ定量的に情報を収集・分析を行い、評価すること
個人としては、CO2の排出を抑えるために、出来る限り化石燃料を消費する生活・活動を行わないことです。
具体例としては、節電(電気使用量の削減)、自転車利用やパークアンドライドの実施(ガソリン使用量の削減)が挙げられます。また、CO2を吸収する取り組みの一つとして、植物を育て、緑を増やしていく活動が挙げられます。
山陽製紙のカーボンオフセット、カーボンニュートラルの取り組み
紙づくりを通して循環型社会へ貢献したいと考える山陽製紙では、カーボンオフセットとカーボンニュートラルの取り組みも実践しております。
カーボンオフセットへの取り組み
弊社では、自社開発のカミトレ™(カミデコ・トレーサビリティ・システム※紙のトレーサビリティシステム)で、紙の再生過程を視覚化しています。
これはオフィス古紙の循環サービス「PELP!(ペルプ)」に付随するもので、PELP!会員から回収された紙がいつ、何に再生されたか、どのくらいCO2が削減されたかなどを森林伐採削減量などで見える化しています。このシステムは、2022年2月に特許を取得しました。(特許番号:第 7029688 号)
カーボンニュートラルへの取り組み
カーボンニュートラルな社会に向けて、山陽製紙でも個人ができることを実践し、会社全体としても脱炭素化を目指した取り組みを行っています。具体例を以下にご紹介します。
SBT(中小企業版)
SBTとは、Science Based Targetsの頭文字であり、直訳すると「科学と整合した目標設定」を意味し、温室効果ガスの削減目標のひとつとされています。
具体的には、パリ協定の水準に適合した「企業ごとの温室効果ガスの削減目標」を指します。
山陽製紙では、2020年度を基準年、2030年を目標年とし、Scope1,Scope2の総排出量を42%削減することを設定しています。
(※Scope1:事業者自らによる温室効果ガスの直接的な排出、Scope2:他社から供給された電気や熱、蒸気などのエネルギー使用に伴う間接的な排出)
最終的な目標としては、2050年までに再エネ100%達成を目指し、紙の製造プロセスや運用時の省エネルギー化に取り組んでおります。
再エネ100宣言Re Action
再生可能エネルギーの100%利用を促進する新たな枠組み「再エネ100宣言 RE Action」に、2019年12月から参加しています。
現在、当社にて売電している太陽光発電なども自家使用に切り替えていく予定です。経営理念「環境に配慮した循環型社会に貢献する」の実現の為に再エネ100%を目指します。
エコアクション21
エコアクション21とは、環境省が策定した環境マネジメントシステムであり、山陽製紙は経営理念を刷新した後の2008年より認証を取得し継続して採用しております。
私たちのような中小企業規模でも取り組みやすい環境経営システムの在り方を規定しており、PDCAサイクルを回しながら紙の製造活動におけるCO2排出量の把握や管理を行い、会社全体としてのCO2排出量の改善に努めています。
以上のように、山陽製紙では企業として脱炭素に向けて取り組んでいます。
一方、個人でカーボンニュートラルに取り組むにはどのような方法があるでしょうか?
家庭における主なCO2排出源は照明や家電製品、次いで自動車に由来するものだそうです。
電気の契約を再生エネルギーのものに見直す、マイカーの利用頻度を見直し鉄道などの公共交通機関を優先利用する、置き配や宅配ボックスの利用で再配達を防ぐ…このような日常に密接に関わる行動を少しずつ見直すことでもCO2の削減に繋がります。
参考リンク:ポータブル電源ソーラーパネル
(Jackery公式サイトへ遷移します)
紙創りを通して喜びを共有する山陽製紙
山陽製紙は創業以来、紙と共に歩んできた再生紙のスペシャリスト集団です。
環境のみならず、様々な社会的な課題に真摯に向き合い、自社の特徴を活かしながら解決のために挑戦する企業のお役に立ちたいと考えています。
小ロットでも発注できる製紙メーカーを探している
製紙・商品開発の相談がしたい
工場見学をしてみたい
…など、ぜひお気軽に山陽製紙にお問い合わせください。
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山陽製紙は創業以来、紙と共に歩んできた再生紙のスペシャリスト集団です。 環境のみならず、様々な社会的な課題に真摯に向き合い、自社の特徴を活かしながら解決のために挑戦する企業のお役に立ちたいと考えています。- 小ロットでも発注できる製紙メーカーを探している
- 製紙・商品開発の相談がしたい
- 工場見学をしてみたい
執筆者:山陽製紙
1957年の設立以来、60年余り大阪・泉南市で再生紙に携わってきた紙づくりのプロフェッショナル集団です。 工業用クレープ紙の製造のほか、廃棄されてしまう製造副産物やオフィス古紙などを紙に抄き込みアップサイクルした「オーダーメイド再生紙」や、オフィス古紙の回収や再資源化サービスの「PELP!」など、限りある資源を活用し、循環型社会を実現するため日々取り組んでいます。 小さな製紙メーカーだからこそできる600kgからの小ロットの製紙で、お客様の想いに寄り添った紙づくりを実現していきます。