紙に食べ物を混ぜられる?!混抄紙とは

カテゴリー: 紙のことコラム 投稿日:2024.07.30
sanyoAdmin

執筆者山陽製紙

紙に食べ物を混ぜられる?!混抄紙とは

山陽製紙の「オーダーメイド再生紙」と混抄紙(こんしょうし)

混抄紙とは何か?

混抄紙(こんしょうし)という言葉を聞いたことはありますか?
混抄紙とは、紙を製造する際にパルプ以外の素材を混ぜ込むことで作られる特別な種類の紙のこと。(古本や折り鶴のような木材パルプでできているものを再生素材として抄き込んだものも混抄紙と呼ばれることがあるようです)
この技術により、企業はさまざまな廃棄物やリサイクル可能な材料を再利用し、新しい価値ある製品を生み出すことができます。
例えば、食べ物の残渣や農業副産物なども混抄紙として活用できます。これにより、廃棄物を減らすと同時に、自社のストーリーを伝える紙製品やブランディングツールをつくることができます。
また、混ぜるものによっては脱臭効果などの機能性をもたせることもできるので、この技術は単に廃棄物削減だけでなく、多様な機能性を持った独自の製品開発にも寄与しています。

山陽製紙の「オーダーメイド再生紙」とは

山陽製紙の「オーダーメイド再生紙」とは、前項でご説明した「混抄紙」とほぼ同義となります。
※お客様のご依頼によっては木材パルプ(古本など)も扱うため、混抄紙を含めた「再生紙」と銘打っています。
混抄紙は、バナナやサトウキビのような植物の繊維を混ぜたものが一般的に流通しているので、見たり触れたりしたことがある方も多いのではないでしょうか。
山陽製紙の「オーダーメイド再生紙」では、基本的に在庫を持たずお客様からのご依頼毎に混抄紙を製造するのが大きな特徴です。
混抄紙として比較的ポピュラーな素材を扱うこともあれば、全く前例のない素材にチャレンジすることもあります。(この「未知の素材に挑戦」ができるのも、小さな製紙メーカーである山陽製紙だからこそだったりします)
混抄の難易度が高い素材の場合も、製造部門が原料の配合の調整を行い完成に近づけます。
再生紙づくりのエキスパートがお客様だけの混抄紙をつくるサービスが「オーダーメイド再生紙」なのです。

例えば、コーヒーかすや茶葉、野菜や果物の繊維、お菓子の切れ端、衣類の繊維など、多種多様な素材をアップサイクルしてユニークな質感と風合いを持つ紙を作り上げます。
このようにして作られた混抄紙は、その見た目や手触りから他では得られない個性があり、企業ロゴ入りの商品パッケージやパンフレット、ユニークな名刺など、多岐にわたる用途で利用されています。
注意が必要なのは、混ぜられるものには制限があることと、混ぜる原料の配合率は非木材パルプの素材であれば20%までと、廃棄物を全てアップサイクルできるわけではないことです。

その他のご注意点を見る

ぜひ、廃棄物のアップサイクル、循環型社会を構築していく中でのひとつのプロセスとして「オーダーメイド再生紙」を活用していただければと思います。

世の中の環境への関心と、インパクトある商品アピールを兼ね備えた環境紙として

世の中の環境への関心が高まる中、紙に食べ物を混ぜられるというキャッチーな「混抄紙」は年々注目を集めています。従来のリサイクルペーパーと異なるのは、パルプ以外の廃棄物や副産物も有効活用することできること。
廃棄物をアップサイクルすることで資源循環型社会に貢献できます。
山陽製紙でつくられる紙は「オーダーメイド再生紙」含め全てが再生紙ですが、その製造過程では化学薬品の使用を極力抑えているため、生態系への負荷も軽減されます。
製紙の際に大量に消費する水も、高度排水処理施設で魚が棲めるレベルまで浄化して川に還しています。
そんな環境から生まれる「オーダーメイド再生紙」は単なるエコ商品ではなく、新しいライフスタイル提案でもあります。そのユニークさをブランディングや資源の有効活用に取り入れる企業が増えています。

山陽製紙がつくる「オーダーメイド再生紙」の事例

オーダーメイド再生紙の事例① 製茶残渣などを混ぜた紙

事例①は製茶の過程で発生する副産物を紙に抄き込んだもの。
食品を混ぜる紙の中でも、茶殻やコーヒーかすのような製品を製造する過程で出る副産物は特にポピュラーです。
エシカル消費やSDGsへの理解を促進し、茶農家支援にも繋げていくプロジェクトのため茶の実や茶葉を加工する過程で排出される副産物を有効活用した混抄紙のご依頼をいただきました。
「お茶のまち静岡市」を盛り上げるため、様々な連携パートナーの尽力で生まれたオーダーメイド再生紙です。
風合いや色味にお茶の名残が感じられる、「お茶の紙」となりました。
この事例では再生重量(※)600kgのうち5%の製茶残渣・茶の実搾油残渣を抄き込みました。
※再生重量とは、お客様からお預かりした原料、弊社でご用意する古紙原料の総重量のことです。

オーダーメイド再生紙の事例② 廃棄予定ユニフォームを混ぜた紙

事例②では、廃棄されてしまうユニフォームを紙に抄き込みました。
ユニフォームの切り替えにより、不要になった旧ユニフォームは廃棄(一部はリサイクル)されます。
しかし、これまでのユニフォームには企業や社員が紡いできた歴史があり、そのまま捨ててしまうのはもったいない……。
そんなお客様の気持ちに応えるべく、旧ユニフォームの一部を紙に抄き込んだオーダーメイド再生紙を作成。
店舗に飾るPOPやサービス説明のリーフレットとしてアップサイクルされました。
この事例では再生重量600kgのうち10%のユニフォームを抄き込みました。

オーダーメイド再生紙の事例③ 古本を混ぜた紙

事例③は、古本を抄き込んだオーダーメイド再生紙です。
古本は古紙にあたるので、厳密には混抄紙ではありませんが、弊社の「オーダーメイド再生紙」としてご紹介します。
クライアント企業には一日約2万冊の本が届き、そのうち買い取れる本の数は半分の約1万冊。 買取が叶わなかった本は古紙回収業者を通じて他の紙資源と合わさり、製紙工場にて新たな紙として再生されます。
このサイクルが決して悪いことではありませんが、本を扱う企業としてもっと別の形で、「本であったこと」を価値として表現できないかという想いのもとつくられた再生紙です。
一般的には再生紙であっても溶解・漂白等の過程で白く平滑性のある用紙へ再生されるので非再生紙と遜色ないものが出来上がります。
しかしこの事例では粉砕や溶解の過程を微調整したことで、敢えて元の古本の文字を残す紙ができました。
本の記憶を持つ紙はノートに生まれ変わり、人気を博しています。
この事例では再生重量600kgのうち70%の古本を抄き込みました。

資源を有効活用したい、想いを紙として残したい。オーダーメイド再生紙の素材やその背景は多種多様です。
そのためひとつひとつの紙がとてもユニークで魅力的になります。

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オーダーメイド再生紙(混抄紙)を作ってみたい方へ

オーダーメイド再生紙作成プロセス


ここでは山陽製紙の「オーダーメイド再生紙」の作成プロセスをご紹介します。
まずは、抄き込みたい原料についてヒアリングさせていただきます。本契約の前にご希望の素材を少量弊社へ送付いただき、ハンドサンプル(手すきのサンプル※有料)を1枚から作成することも可能です。この過程で風合いのイメージや配合量のすり合わせを行い、ご納得いただけましたらご発注に進みます。
その後、弊社に廃棄物などの原料を適切な状態で送っていただき、本抄造(製紙マシンでの本番製造)がスタートします。
大阪本社工場での抄造には立ち会いも承っていますので、自社の廃棄物や副産物が紙に生まれ変わる過程をご見学いただけます。(要お打合せ)
完成した紙はお客様のご希望のサイズでのご納品、または加工まで一貫して弊社にお任せいただくことも可能です。

混ぜられる廃棄物や副産物

混抄紙には製造過程でさまざまな廃棄物や副産物を紙に混ぜ込むことができます。混ぜられる廃棄物や副産物では、具体的には以下のようなものがあります。
「コーヒーかす」や「茶葉」「果皮」「野菜くず」や「卵殻」などの食品系の残渣、副産物。
その他、「花」「衣類などの繊維」「刈った芝」といった素材も可能です。
また、「炭」を混ぜ込むことで炭の持つ機能(脱臭、調湿など)を活用できます。希望の素材を適切に選び組み合わせることで、ユニークな風合いや機能を持つ混抄紙が誕生します。

その他のご注意点

前項では紙に混ぜられる素材をご紹介しましたが、混ぜられないものもあります。
主に自然環境や人体に有害な物質、抄紙マシン損傷の恐れがあるものは混抄できません。 大きさは原則30μ(ミクロン:1ミリメートルの1000分の1)以下のものです。
弊社抄紙過程の機械内でこのサイズにできないものは、別途「粉砕費用」を頂戴しています。
※素材によっては例外となるものもございますのでまずはご相談ください。

また、混ぜられる割合は非木材パルプの原料は紙に対して最大約20%が目安です。原料が木材パルプ(古紙など)であれば、配合比率を挙げることも可能です。比率は原料によって異なりますので、サンプル作成やお客様のご利用用途等を鑑みてご相談のうえ、最終的に決定してまいります。

抄紙のミニマムロットは原料600kg(仕上がり約400kg)です。これは一般的な厚さで長三封筒が約30,000枚作成可能な量です。
※数量は目安となります。原料・紙の厚みなどで前後いたします

お客様自身が希望する材料を指定してオーダーメイドできる点が「オーダーメイド再生紙」の大きな魅力です。制約もありますが、まずはお気軽にご相談ください。

紙創りを通して喜びを共有する山陽製紙

紙創りを通して喜びを共有する山陽製紙 山陽製紙は創業以来、紙と共に歩んできた再生紙のスペシャリスト集団です。 環境のみならず、様々な社会的な課題に真摯に向き合い、自社の特徴を活かしながら解決のために挑戦する企業のお役に立ちたいと考えています。
  • 小ロットでも発注できる製紙メーカーを探している
  • 製紙・商品開発の相談がしたい
  • 工場見学をしてみたい
…など、ぜひお気軽に山陽製紙にお問い合わせください。
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執筆者:山陽製紙

1957年の設立以来、60年余り大阪・泉南市で再生紙に携わってきた紙づくりのプロフェッショナル集団です。 工業用クレープ紙の製造のほか、廃棄されてしまう製造副産物やオフィス古紙などを紙に抄き込みアップサイクルした「オーダーメイド再生紙」や、オフィス古紙の回収や再資源化サービスの「PELP!」など、限りある資源を活用し、循環型社会を実現するため日々取り組んでいます。 小さな製紙メーカーだからこそできる600kgからの小ロットの製紙で、お客様の想いに寄り添った紙づくりを実現していきます。

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