不用品を紙としてアップサイクルする際の特徴・事例・注意点は?
アップサイクルは、今ある資源を有効活用することができるアイデアとして、世界で大きな注目を集めています。今回はその中でも、不用品から紙へとアップサイクルする際の特徴について取り上げます。
また、紙としてアップサイクルされた製品の事例の紹介とあわせて、アップサイクルの際に気を付けるべきポイントなどについても解説。アップサイクルについて詳しい情報が知りたい方や、廃棄物をアップサイクルする紙が作りたい方はぜひ最後までお読みください。
目次
アップサイクルの基本
まず、SDGsにも大きくかかわるアップサイクルの基本的な情報について見ていきましょう。
アップサイクルは、「もう使わないアイテムの価値を高める形で再利用する」という意味を持つ言葉です。たとえば、もう着ない洋服を生地として再利用し、おしゃれなデザインのバッグなどに姿を変える取り組みが例に挙げられます。
アップサイクルは、不用品を素材に戻してから再利用する「リサイクル」や、アレンジや加工を加えて再利用する「リメイク」とも似ているように思えます。しかし、アップサイクルは他の言葉と違って、「再利用前と比べて、価値を高めること」を重視していることが特徴です。
リサイクルとアップサイクルの違いについては以下の記事で取り上げているので、ぜひお読みください。
関連記事:アップサイクルとリサイクルの違いは?|リメイクなど似ている用語も紹介
なお、他のアイテムにアップサイクルできる素材にはさまざまな種類があります。
- 食品
- 廃材
- 自然から生まれる廃棄物
- ジュエリー
- 化粧品
これらをアップサイクルし、魅力的な新しい商品に生まれ変わらせます。
アップサイクルに利用される素材や具体的な事例については、こちらの記事でさらに詳しく解説していますので、参考にご覧ください。
紙としてアップサイクルされた製品の特徴
アップサイクルでは、ごみを削減しながら多種多様なアイテムを製造することが可能です。今回はその中でも、様々な素材からアップサイクルした紙について取り上げます。ほかの製造例と比べて、紙としてアップサイクルされた製品にはどのような特徴があるのでしょうか。
①表現が幅広い
紙としてアップサイクルされた製品は、幅広い表現を可能とするのが特徴です。たとえば、名刺をはじめとした平面ツールから、立体的なパッケージまで、その活用方法は多くの分野にわたります。ノベルティなどの販促ツールにも活用しやすく、自社の宣伝にも効果的です。
こちらの記事では、ノベルティに関する情報をまとめています。ノベルティの意味、効果、具体的な制作事例について説明しているので、あわせてご覧ください。
関連記事:ノベルティの意味とは?目的や効果、企業イメージ向上の事例もチェック
②質感を残せる
使用した素材の質感を残すことができるのも、アップサイクルで紙を製造した際の特徴です。食品や廃材などが持つ独自の素材感が、紙の魅力を引き立てます。また、質感だけでなく、色や模様などもユニークな紙となり、様々なオリジナリティのあるプロダクトに展開できるところもポイントです。
③脱臭・調湿効果が期待できることもある
アップサイクルする素材によって紙自体に脱臭などの効果を持たせることができるため、脱臭用ペーパーなどを製造することも可能です。
アップサイクルは、製紙業の可能性を広げてくれる技術だと言っても過言ではないでしょう。
紙としてアップサイクルした事例
次に、紙としてアップサイクルした製品事例について紹介していきます。関連するプロジェクトを検討している場合は、参考にご覧ください。
①食材を紙にアップサイクルする
アップサイクルで紙を製造する際によく見られるのは、野菜や果物のくず・コメ・製茶の副産物などをはじめとした食品を素材にするケースです。端材など、商品にできない食品を廃棄することなく、新たに紙として再利用することで、食品ロスなどの問題を考えるきっかけを生み出したり、さまざまな課題の解決にもつなげられたりするでしょう。
アップサイクルに長年取り組んでいる弊社・山陽製紙株式会社でも、オリジナルの紙が製造できる「オーダーメイド再生紙」というサービスで、さまざまな食品を再生紙に生まれ変わらせています。
以下の記事では、食べ物などの異素材を紙に混ぜこむ「混抄紙(こんしょうし)」について解説しています。本記事とあわせてご確認ください。
関連記事:紙に食べ物を混ぜられる?!混抄紙とは
②食材以外を紙にアップサイクルする
紙にアップサイクルできるのは、食品だけではありません。たとえば、繊維のくず・はぎれ・古本・植物などが例に挙げられるでしょう。
弊社でも、廃棄される予定のお花や洋服などを紙にアップサイクルしています。これまで廃棄されていた「製品化できない部分」などがビジネスにつなげられるため、事業の拡大を目指す企業にはぜひおすすめしたいアイデアです。
こちらの記事では、再生紙の概要について詳しく説明していますので、関連情報としてぜひお読みください。
紙としてアップサイクルする際の注意点
続けて、アップサイクルで紙を製造するにあたって気を付けておきたいポイントについて解説します。よりスムーズに準備を進めるためにも注意したい点を一覧として、3つピックアップしました。
①素材を混ぜる量には制限がある
食品や布地といった非木材パルプの素材をアップサイクルする場合、素材を混ぜる量には制限があります。紙以外のものを抄き込む際の量(混抄率)は、山陽製紙では1~20%までとしています。これは、印刷適性や紙としての強度を担保するためです。
混ぜたい素材の混抄率については、前もって製紙メーカーや協力会社と詳しく相談しておく必要があります。
②アップサイクルできない素材もある
素材の中には、アップサイクルが難しい種類も存在します。たとえば、金属、油分が多いもの、自然や人体に害を与えるものなどが例に挙げられます。このほかに、機械を傷める可能性があるものなどを使いたい場合も、事前の打ち合わせが必須となります。
③製造量を意識する
アップサイクルして紙を作る場合は、最終的な製造量を意識する必要があります。なぜなら、最小ロットでも使用を想定していた量に対して仕上がる量が多すぎるケースがあるからです(名刺制作の場合など)。山陽製紙では、原料を仕込む最小ロットが600kgとなっています。最終の仕上がり量を名刺で換算すると、約30万枚から35万枚となります(実際の数は厚み等によって異なります)。
アップサイクル紙を希望する場合は、最終製品のイメージを持ち、計画的に準備を進めていくといいでしょう。
紙創りを通して喜びを共有する山陽製紙
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執筆者:山陽製紙
1957年の設立以来、60年余り大阪・泉南市で再生紙に携わってきた紙づくりのプロフェッショナル集団です。 工業用クレープ紙の製造のほか、廃棄されてしまう製造副産物やオフィス古紙などを紙に抄き込みアップサイクルした「オーダーメイド再生紙」や、オフィス古紙の回収や再資源化サービスの「PELP!」など、限りある資源を活用し、循環型社会を実現するため日々取り組んでいます。 小さな製紙メーカーだからこそできる600kgからの小ロットの製紙で、お客様の想いに寄り添った紙づくりを実現していきます。