「アイコン」のSDGsと「私(自分事)」のSDGs

カテゴリー: よみもの 投稿日:2021.09.21 / 最終更新日:2024.11.21
sanyoAdmin

執筆者山陽製紙

「アイコン」のSDGsと「私(自分事)」のSDGs

SDGsという言葉を、見たり聞いたりしない日はなくなりました。胸元に17のゴールのアイコンバッジを付けているビジネスマンもよく見かけます。

時には「SDGsは流行やろ。」と言う人もあります。

先日GPN(グリーン購入ネットワーク)のセミナーで、SDGsの研究を行っている法政大学の川久保 俊教授のお話を聞く機会がありました。お話を聞いて胸のつかえがとれた気がしたので、そのことを書いてみたいと思います。

学生とSDGsの距離

SDGsの取り組みが身の回りに広がってくるに付け、我が社でもSDGsを学び、理念にうたっている“環境”だけではなく、隠れている“社会課題”にも目を向けるようになり、できることから取り組んでいます。

そんな中でSDGsの「アイコン」が、一人歩きして広がっているような印象を、自社内の活動でも受けるようになりました。

「SDGsやってます。」のような。

それはそれでいいのですが、なぜかどうも落ち着かない心持ちでした。

川久保先生はまず、1972年の研究レポート「成長の限界」(注:1)を紹介されました。

「人口増加や環境汚染などの現在の傾向が続けば、100年以内に地球上の成長は限界に達する」と約50年前のこのレポートには書いてあります。「成長の限界」はSDGsの説明に加えられることもたまにありますが、その定量的なアプローチや、2000年に入ってのこのレポートの検証結果はあまり触れられることはありませんでした。

次に1987年にブルントラント委員会(注:2)で示された「サスティナブル・ディベロップメント=持続可能な開発」の定義について。

「将来の世代の欲求を満たしつつ,現在の世代の欲求も満足させるような開発」と定義されたものの、具体的に何をするのか、というところまでは示されていませんでした。

それを具体的な行動計画にまで落ち仕込んだものがSDGsであると関連付けて説明して下さいました。

そして、こう続けられました。

「学生たちは、SDGsという言葉を聞くと目をキラキラさせるのです。」

その言葉を聞いたとき、若い人たちが自分たちの未来のために、自分事として向き合っていることを知りました。

“現在の世代”が「アイコン」のSDGsならば、“将来の世代”は「私(自分事)」のSDGsなのだ、という思いを強く抱きました。

世代ごとで考え方に差がある

セミナーなどで解説されるSDGsと言えば、2015年9月に国連で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の説明から始まり、17のゴールのアイコンとともに、自社はどう取り組むか、の話に終始してしまうことが多いので、何となく“「アイコン」のSDGs”のような印象を受けていましたので。

「手段」であるはずのSDGsが「目的」化してしまっているというか。

けれどもそれは、私自身の歴史的背景の理解不足に起因するのだと納得すると共に、私と同じような“現在の世代”と“そして子供たちや学生さんのような”将来の世代”が一緒に取り組んでいくことも大切なのではないかと思うようになりました。

例えば、“世界レベルでの人的活動の爆発的増大”という事実。

法政大学の公開動画「入門講座と学生によるSDGs研究事例紹介」の中で、川久保先生の示されるグラフは「社会経済的な傾向」と「地球システムの傾向」が、様々な要素別にグラフで見える化されており、見れば一目でわかるようになっています。

引用元:SDGs入門講座と学生によるSDGs研究事例紹介 引用元:SDGs入門講座と学生によるSDGs研究事例紹介 https://youtu.be/83cP1yktv70 @YouTubeより

例えば「社会経済的な傾向」の代表としてGDP。

グローバルなレベルの経済活動が、指数関数的に増えているのが良く分かります。

一体この経済活動の伸びは、どこまで行くのか?

GDPの成長が国の成長発展を示すインジケーターのように話題になります。

GDPの成長が止まることがマイナスであるかのように。

引用元:SDGs入門講座と学生によるSDGs研究事例紹介 引用元:SDGs入門講座と学生によるSDGs研究事例紹介 https://youtu.be/83cP1yktv70 @YouTubeより

一方で、このような成長の裏には、ネガティブインパクトも同様の指数関数的な伸びを示してしていることを合わせて説明されます。例えば、「地球システムの傾向」の中で地球温暖化の原因となる二酸化炭素濃度の曲線。

引用元:SDGs入門講座と学生によるSDGs研究事例紹介 引用元:SDGs入門講座と学生によるSDGs研究事例紹介 https://youtu.be/83cP1yktv70 @YouTubeより

この「社会経済的な傾向」と「地球システムの傾向」のバランスのとり方については、“現在の世代”と“将来の世代”では考え方が大きく異なるように感じます。

それが、「アイコン」のSDGsと「私(自分事)」のSDGsの差ではないか。

そう考えたとき、やるべきことが少し見えてきて、胸のつかえがとれたような気がしました。

山陽製紙の決意

このギャップを埋める第一歩として、まずは「地球の歴史と未来」を両世代が正しく共有することを、わが社の取り組みに新たに加えたいと考えます。

(注:1)1972年に発表された『成長の限界』とは、スイスの民間シンクタンク「ローマクラブ」が資源と地球の有限性に着目し、マサチューセッツ工科大学のデニス・メドウズを主査とする国際チームに委託して、システムダイナミクス(シミュレーション)の手法を使用してとりまとめた研究のこと。

(注:2)1984年国連に設置された「環境と開発に関する世界委員会」のこと。
委員長のブルントラント女史の名前からブルントラント委員会、また国連環境特別委員会とも呼ばれる。

この記事を書いたひと

原田千秋 山陽製紙株式会社 専務取締役

原田千秋山陽製紙株式会社 専務取締役

広島県呉市出身

広島大学教育学部卒業後、同じ大学のマンドリンクラブで同期だった原田六次郎氏(現:山陽製紙株式会社 代表取締役社長)と結婚。
中学校の教員を経て、1992年、経理等を担当するため山陽製紙の社員となる。
瀬戸内海の島育ちにも関わらず、水泳もできない運動音痴。
耳元に広がる波の音や、山が黄金色に染まるみかん畑などが心の原風景。
山陽製紙(株)の経営ビジョン「地球の財産を生かし、自然と共に生きる永続企業」もその様な原風景が背景にある。
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    紙創りを通して喜びを共有する山陽製紙 山陽製紙は創業以来、紙と共に歩んできた再生紙のスペシャリスト集団です。 環境のみならず、様々な社会的な課題に真摯に向き合い、自社の特徴を活かしながら解決のために挑戦する企業のお役に立ちたいと考えています。
    • 小ロットでも発注できる製紙メーカーを探している
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    …など、ぜひお気軽に山陽製紙にお問い合わせください。
    sanyoAdmin

    執筆者:山陽製紙

    1957年の設立以来、60年余り大阪・泉南市で再生紙に携わってきた紙づくりのプロフェッショナル集団です。 工業用クレープ紙の製造のほか、廃棄されてしまう製造副産物やオフィス古紙などを紙に抄き込みアップサイクルした「オーダーメイド再生紙」や、オフィス古紙の回収や再資源化サービスの「PELP!」など、限りある資源を活用し、循環型社会を実現するため日々取り組んでいます。 小さな製紙メーカーだからこそできる600kgからの小ロットの製紙で、お客様の想いに寄り添った紙づくりを実現していきます。

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