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光り輝くダイヤモンドのように、すばらしいが傷つきやすいこの地球 ~西さんのこと~

カテゴリー: よみもの 投稿日:2021.11.29 / 最終更新日:2024.11.21
sanyoAdmin

執筆者山陽製紙

光り輝くダイヤモンドのように、すばらしいが傷つきやすいこの地球

製紙会社である山陽製紙では、紙を創るのにかかせない伏流水の供給源である男里川(おのさとがわ)を毎月、有志で清掃しています。ゴミを拾ったり、草を刈り取ったり。魚や鳥の住みやすい環境をつくるために、地域の皆さまと協力して、毎月第二日曜日、朝8時から1時間ほど、活動しています。
現在まで続くこの清掃活動には、ある方の印象深いエピソードがあります。

男里川(おのさとがわ)の掃除

ある夏の日、会社にランニング姿の、近所に住んでいると思われる人物がやってきました。既に仕事をリタイアして久しいと思われる年頃。入ってくるなり、挨拶もそこそこに「あんたとこの会社、男里川(おのさとがわ)の掃除してくれてるやろ……」

彼の話を聞いてみると、「なかなかいいことをやっているから、自分たちも活動しているので一緒にやらないか。ついては仲間に入れて欲しい」ということでした。

雰囲気に押されて、それ以上詳しく話を聞くこともなく、一緒に活動することになりました。その人の名前は西義彦。

仲間に入れて欲しいという内容だったので、「月に1回、第2日曜日、1時間、男里川の河川敷のゴミ拾い」という活動を、これまで通りやろうと思っていました。

彼は、当日6,7人の仲間を連れてやってきました。年の頃はみんな西さんと同じくらい。西さんと違って、穏やかで寡黙な人たち。こちらは、元ヤンキー族の社員10余名。異質な組み合わせだけれど、それぞれに活動を始めました。けれども、意識が高いのは西さんチーム。チャラチャラとゴミ拾いなんかやっていると馬鹿にされそうな雰囲気でした。

「この辺りには、男里川以外に3つの河川があるんや。特に汚いのは番川(ばんかわ)やな。男里川はあんたらのお陰でましや。けど、ゴミ拾いだけしてたんではあかんで。草刈りせんと!」

「あんたんとこ、草刈り機あるか? 5台は欲しいな。レーキ(草を集めたり整地に使用する農具)もこれだけでは足らんし、ゴミ袋と一緒に用意しておいてな。草刈り機の混合油も切らさんようにしてな」

というわけで、我が社もゴミ拾いだけの活動から草刈りもやることになりました。

「月1回1時間くらいの掃除で川がきれいになるわけがない。」

「たった1回なんやから予定したところがきれいになるまで終わったらいかん!」

だんだん西さんの要求はエスカレートしてきます。

西さんは、月1回の1時間の活動などやっている内に入らないというのです。西さんチームは毎週水曜日の活動も始めました。それも、予定が片付くまでエンドレスで。

我が社も強制されそうになったけれど、こちらは社内有志チームのボランティア。普段は仕事がある。前日に飲み過ぎて二日酔いになっても、活動日の日曜日だけは早朝から出てくる。しかしそれ以上は無理。社員たちは譲りませんでした。

そんなこんながあって、気がつけば、我が社には川掃除のための道具一式を収納する倉庫ができました。水曜日の活動のためのゴミ袋や混合油なども保管します。時々切らしていたら叱られました。

西さんは泉南地区すべての川の上流から下流までを知り尽くしていました。川だけでなく、公園のすべても。「公園は、子どもらが遊ぶやろ。そやけど危ないところが多いんや。汚いしな。市役所はいっこも動かへんから、自分がやるんや」

いつの間にか主客転倒して、我が社のメンバーも西さんの指揮命令に従うようになっていました。一方で、活動時間は短くても人数だけは負けないように、我が社の参加メンバーは徐々に増えていきました。

やがて、「万が一の事故に備えて、大阪府のアドプト制度に加入しよう」と西さんから声がかかりました。西さんが「アドプトリバー男里川の自然を守る会」と命名して、我が社が事務局、会長には西さん。

男里川(おのさとがわ)の掃除

ランニング姿で現れて15年。西さんは4年前に亡くなりました。酸素ボンベを担いで肩で息をしながらでも、最後の最後まで活動を続けていました。

私達は知らず知らずその遺志を受け継いでいるようです。毎月必要な道具を活動場所へ運んだり片付けたり、活動を継続するための社内委員会ができ、委員長は全社員の出席率50%を目指しています。完全なボランティア参加ではあるけれど、みんな笑顔でやってきます。

手元に、西さんが会長として外部に投稿した原稿が残っています。約1000字の原稿の途中に、活動趣旨が書いてありました。

「ところで、私達の活動趣旨はと申しますと、『小さな子供達や将来生まれて来られる赤ちゃん達に如何に素直な形でこの地球をバトンタッチできるのか』という命題に向かって頑張っております。光り輝くダイヤモンドのように、すばらしいが傷つき易いこの地球の一隅でも綺麗にしたいという気持ちで活動しておりますが、まずは足下の泉南・阪南両市から、そしてできることならもっと広く、和泉の国を良くしてゆきたいと願っております。」

紙創りを通して喜びを共有する山陽製紙

紙創りを通して喜びを共有する山陽製紙

山陽製紙は創業以来、紙と共に歩んできた再生紙のスペシャリスト集団です。
環境のみならず、様々な社会的な課題に真摯に向き合い、自社の特徴を活かしながら解決のために挑戦する企業のお役に立ちたいと考えています。

  • 小ロットでも発注できる製紙メーカーを探している
  • 製紙・商品開発の相談がしたい
  • 工場見学をしてみたい

…など、ぜひお気軽に山陽製紙にお問い合わせください。

この記事を書いたひと

原田千秋 山陽製紙株式会社 専務取締役

原田千秋山陽製紙株式会社 専務取締役

広島県呉市出身

広島大学教育学部卒業後、同じ大学のマンドリンクラブで同期だった原田六次郎氏(現:山陽製紙株式会社 代表取締役社長)と結婚。
中学校の教員を経て、1992年、経理等を担当するため山陽製紙の社員となる。
瀬戸内海の島育ちにも関わらず、水泳もできない運動音痴。
耳元に広がる波の音や、山が黄金色に染まるみかん畑などが心の原風景。
山陽製紙(株)の経営ビジョン「地球の財産を生かし、自然と共に生きる永続企業」もその様な原風景が背景にある。
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    • 製紙・商品開発の相談がしたい
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    …など、ぜひお気軽に山陽製紙にお問い合わせください。
    sanyoAdmin

    執筆者:山陽製紙

    1957年の設立以来、60年余り大阪・泉南市で再生紙に携わってきた紙づくりのプロフェッショナル集団です。 工業用クレープ紙の製造のほか、廃棄されてしまう製造副産物やオフィス古紙などを紙に抄き込みアップサイクルした「オーダーメイド再生紙」や、オフィス古紙の回収や再資源化サービスの「PELP!」など、限りある資源を活用し、循環型社会を実現するため日々取り組んでいます。 小さな製紙メーカーだからこそできる600kgからの小ロットの製紙で、お客様の想いに寄り添った紙づくりを実現していきます。

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