「自然と生体に学ぶバイオミミクリー」 その1
山陽製紙(株)の経営ビジョンは、「地球の財産を生かし、自然と共に生きる永続企業」です。
「自然と生体に学ぶバイオミミクリー」という本は、この経営ビジョンに少なからぬ影響を与えました。
※バイオミミクリー…「生体」を意味する“Bio”と「模倣」を意味する
“mimicry”からなる造語。直訳すると「生体模倣」となります。生物の機能や構造からヒントを得て技術開発を行うことを指します。
この本は、Janine M.Benyus(ジャニン・ベニュス)という人が書いたのですが、彼女の紹介文には、American natural sciences writer, innovation consultant, and author.と書かれています。
ナチュラルサイエンスライター、イノベーションコンサルタント……不思議な肩書きのように思えます。そして訳は吉野美耶子、監訳が山本良一。
発売の2006年から15年間、この本を繰り返し繰り返し読んできたのは、「生物学」の知識を得ると言うより、まるで絵本のような文体のやさしさや、自然の音が耳に飛び込んでくるようなみずみずしい描写、そしてある種の「恐さ」に惹かれたからかもしれません。
子どもたちが、大好きな絵本を飽きることなく「読んで!」とせがむように、特別な時間をつくりたいとき、いつもこの本を手にしてきました。
会社のビジョンを明確にするために、毎春沖縄を訪れていたことがあります。スーツケースの中には必ずこの本をしのばせました。そして日が昇る前のホテルの一室で、ほの白い浜辺に寄せる波の音を聞きながら、この本を開きました。
「自然を征服し、“改善する”ことに慣れている社会にとっては、自然を尊重してまねようという姿勢は革新的なアプローチであり、まさしく革命です。
バイオミミクリー革命は、産業革命とは違って、我々が自然界から“搾り取れる”ものではなく、“学べる”ものを重視する時代を開く先達なのです。」
出典:Janine M. Benyus(著)、山本 良一(監訳)、吉野 美耶子(訳)「自然と生体に学ぶ バイオミミクリー」、オーム社、2006年、13ページ
サスティナブルとか、SDGsとかという昨今の喧噪(?)を皮肉るような言葉で、自然や動物たちがジッと人間を見つめるかのような視点で、この本は書かれています。
「生態学者ポール・エールリヒは、こう言っています。“人間には遺伝子学的に長期の危機に対応できる資質は備わっていないー 鋭い牙をむくトラに洞穴の前で吠えられるような目に遭わなければ動かないのだ”と。
最近では、環境というトラがテレビや新聞で、また井戸の中や海岸で舌なめずりするようになり、われわれはようやく危機に気づいてぞっとしているのです。」
出典:Janine M. Benyus(著)、山本 良一(監訳)、吉野 美耶子(訳)「自然と生体に学ぶ バイオミミクリー」、オーム社、2006年、13ページ
生態学者が言うとおり、「人間には長期の危機に対応できる資質は備わっていない」ことは既に証明されています。15年前にこの本に書かれた現実が、今も変わらずそのまま横たわっているからです。
ぞっとしながらも、相変わらず地下資源を掘り起こし、大量のゴミを捨て、生き物のすみかを破壊し続けている人間の姿は、どこか寓話を思い起こさせます。
地球には、人類よりはるかに長い年月生存してきたさまざまな生物種が存在すること。そして彼らがさまざまな発明をしてきたことを知り、進化における先輩たちから学ぶバイオミミクリー。この本は、我々は万物の霊長だなどと考える人間の傲慢さと、自然の寛容さに気づかせてくれます。
何度も読み返し、何度も同じ箇所に線を引き・・・その線が重なった箇所を振り返りながら、何回かに分けて、自然と人間との関係性をもう一度考えながらまとめてみたいなと思います。今回は第1回。
この記事を書いたひと
原田千秋山陽製紙株式会社 専務取締役
広島県呉市出身
広島大学教育学部卒業後、同じ大学のマンドリンクラブで同期だった原田六次郎氏(現:山陽製紙株式会社 代表取締役社長)と結婚。中学校の教員を経て、1992年、経理等を担当するため山陽製紙の社員となる。
瀬戸内海の島育ちにも関わらず、水泳もできない運動音痴。
耳元に広がる波の音や、山が黄金色に染まるみかん畑などが心の原風景。
山陽製紙(株)の経営ビジョン「地球の財産を生かし、自然と共に生きる永続企業」もその様な原風景が背景にある。
紙創りを通して喜びを共有する山陽製紙
山陽製紙は創業以来、紙と共に歩んできた再生紙のスペシャリスト集団です。 環境のみならず、様々な社会的な課題に真摯に向き合い、自社の特徴を活かしながら解決のために挑戦する企業のお役に立ちたいと考えています。- 小ロットでも発注できる製紙メーカーを探している
- 製紙・商品開発の相談がしたい
- 工場見学をしてみたい
執筆者:山陽製紙
1957年の設立以来、60年余り大阪・泉南市で再生紙に携わってきた紙づくりのプロフェッショナル集団です。 工業用クレープ紙の製造のほか、廃棄されてしまう製造副産物やオフィス古紙などを紙に抄き込みアップサイクルした「オーダーメイド再生紙」や、オフィス古紙の回収や再資源化サービスの「PELP!」など、限りある資源を活用し、循環型社会を実現するため日々取り組んでいます。 小さな製紙メーカーだからこそできる600kgからの小ロットの製紙で、お客様の想いに寄り添った紙づくりを実現していきます。